BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
まさか……この人は、いつも私をさらう、あの男達の仲間?
冷や汗が背筋を伝いかけたとき、
「──どこに連れて行くの?」
不意に透き通った声が投げかけられ、灰色の髪の男がハッと立ち止まる。
視線を飛ばせば、廊下の壁際にもたれている小柄な男子生徒がこちらを見て首をかしげていた。
その人は、このあいだ再会したばかりのセイちゃんだった。
「見慣れない顔だね、本当に伯王の生徒?」
「…………」
セイちゃんの指摘に、男は黙り込む。
「とりあえず、その子から手を離して?」
昔のか弱いイメージとは違い、怯えた感じはなく、堂々と彼は告げる。
廊下の西側からガヤガヤと男子生徒の集団が近づいてくるのが見え、舌打ちした男は急に私の手首を解放した。
「……七瀬さん、また次の機会に」
意味深なセリフを残し、男は素早く階段の方へ消えていった。
それを見届けたセイちゃんは、私の方へ一歩近づく。
「大丈夫? 怪我はない?」
「平気。助けてくれて、ありがとう」
昔は、私が助ける方だったのに。
こんな風に助けてもらう側になるなんて、想像もつかなかった。