BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
咲都や美愛と同じ、幼なじみの一人だから大切に思ってくれてるの?
「ん……いい匂い。薔薇みたいな香りだな」
藤川の唇が触れているのは、肌ではなく神経のない髪の毛なのに。
私の鼓動はどんどん速まっていく。
冷静でいられない。
昔よりもっと私のことを好きになりそう、と言ってきたのは、ただセイちゃんの真似をしているだけなんだよね?
自分にそう言い聞かせ、話題を変えてみる。
「ねえ。小学生のとき、いつ転校したの?」
「小学5年の終わりだったかな」
「じゃあ、セイちゃんは?」
「あいつも同じ頃だよ。で、転校先で──何の因果か、あいつも転校してきて。中学のときもずっと同じ学校だった」
「……そうなの?」
そんな偶然、あるんだろうか。
セイちゃんはいつまでも藤川に付きまとわれる形になっていて、気の毒に思えてくる。
彼らは小6から高1までの5年間、私とは別の場所にいたということだ。
その間の彼らのことを、私は何も知らない。
5年間の空白。
どんな学校生活だったんだろう。