先輩に一目惚れしたんで、サイエンス部に入部します!
「今日は俺が教えてやる。そこに座れ」

友永が椅子を指差す。俺は舌を出した。

「やーだね!星野先輩じゃなきゃ絶対に聞かない!」

今日は、消化酵素などを教えると昨日星野先輩は言っていた。消化酵素は難しかったという思い出しかないのに、恋のライバルに教えられたらきっと精神的に終わる!

そんな俺を見て、ニヤリと友永は笑う。そして教科書を開けた。

「タンパク質、炭水化物、脂肪は三大栄養素と呼ばれている。タンパク質は体を作るもととなり、炭水化物と脂肪はエネルギーになるんだ」

コイツ、解説始めやがった!一気に友永に対して殺意が湧く。しかし、友永は空手が得意らしい。突っ込んでいったら、間違いなくボコボコにされる。

でも、俺は他で勝負ができる…!

「だ液に含まれるアミラーゼはデンプンを分解する!分解されたデンプンは、ベネジクト液を入れて加熱すると赤褐色の沈殿ができる!」

俺は、昨日徹夜で暗記したことを言った。友永、そして岩井先輩が驚いた顔で俺を見つめる。

「勉強したの?」

訊ねる岩井先輩に、俺は「はい」と答えた。ドラゴンを倒しに行く勇者のような気分だ。

「一生懸命勉強したぞ!何でも来い!このヤロー!」

俺がそう言うと、友永は再びニヤリと笑い、「言ったな…。では、問題だ」と言う。

「栄養分を体に吸収されやすい物質に分解する消化酵素、その名前とはたらきを答えよ」

いきなり難問じゃねぇか!!俺は昨日した勉強内容を必死で思い出そうとする。頑張るんだ、勇者・大地!この悪魔を倒さなければ、優愛姫は救えない…!!

俺の頭よ、力を貸してくれぇぇぇ!!
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