クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「いえ……!そこまでお世話になるわけには……!」
たしかにお腹は空いているし、今日はもう働けないから明日また日雇いのバイトで稼ぐまでなにも食べられないけれど……。
「──話は明日聞く。……と言ったのは忘れたのか?」
「……それは………」
親切で言ってくれているはずなのになぜか追い込まれる。
「とりあえずその鞄を置け」
「は、はい……」
わたしは鞄を隅に置くしかなかった。
「栂野さんはもう朝ご飯は食べられたのでしょうか……?」
キッチンへ入りシンクを目にすると、今日現在使われた形跡がなく、不思議に思った。
「俺は朝はコーヒーだけだ。でもせっかくだから俺の分も用意してもらおうか」
「えっ……たいしたものは作れませんよ……!?」
「もともとたいしたものはないと言っているだろう」
ひええと心のなかで叫び、聞かなければよかったと若干後悔した。
料理は下手ではないが振る舞えるほどの実力はない。
だが、作らないわけにはいかない状況になり、ひとまず冷蔵庫を開けた。
彼のいうとおり本当にたいしたものはなかった。
一人暮らしだからだろうが、とにかく品数が少ない。
卵と、納豆と、ベーコンと……。
野菜室にはキャベツやレタス、ミニトマトが入れられていた。