輪舞曲-黒と白のcaprice-
それは、組織内の資金を横領したとされるこの院内に隠れ潜む前会計士、現薬剤師の男の実質的殺害の指令だった。やはり、このような目的がなければ一介の組織を束ねる男が易々と表世界に飛び込んでくる筈がない。
どうやらこの男も、ボスの逆鱗に触れてしまったようだ。

「それならそうと最初から言えっての。楽できるかと思ったのに。


…ってこと。あたしには止まってる時間はないみたい。
わかった、アサギ?こんなとこ連れてきても何の意味もないって事が。」

完璧に気配が消えた事を確認した後に、壁に向かって声をかける。
すると、ゆっくりと露になる透き通った人間。

『…気付いてたんだね。俺が戻って来ていたって事を』

「当たり前じゃん。わかんないわけないでしょ。ボスには見えてなかったみたいだけど。で、どこまで聞いたの」

アサギは、相変わらずの無表情と冷徹な瞳と幻影の揺めきを持ってあたしを燻しそうにしながら見下ろしていた。

『…君たちの知り合いが人見知りってとこから、かな。』

「ふーん…まあ、聴かれて困るようなものはないけど。
じゃあ、あたしは行くわ。」
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