クールな御曹司と愛され新妻契約
仕方ないので、まずはパーティー会場から出るために濡れた顔や髪を拭っていると、写真撮影ブースの向こう側から騒然としている人々をかき分けるようにして、華やかなブラウスにフェミニンなセットアップスーツを纏った美しい女性が、慌てた様子で駆け寄ってきた。

「大丈夫ですか? 私がお手伝いさせていただきます。ひとまず、パウダールームへ参りましょうか。ここの後片付けは、会場スタッフにお任せして大丈夫ですので」

栗色の髪を夜会巻きにしている彼女は素早くしゃがみこみ、他のスタッフから受け取ったナプキンで私のヒールを拭き始める。

どう考えても会場スタッフではなく参加者らしい彼女の行為に慌てふためいた私は、「すみません、ありがとうございます。でも、あの、自分でやりますのでっ」と声をかける。

しかし、彼女はテキパキと新たなナプキンをスタッフから受け取ると、「さあ、参りましょう」と有無を言わさぬ様子で、その場を離れるように促した。



バンケットホールから少し離れたホテルのロビー付近にあったパウダールームで、借り物のナプキンを濡らして固く絞る。

「大変でしたね。ガラスの破片などは当たりませんでしたか?」
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