クールな御曹司と愛され新妻契約
「はい。他の方は、大丈夫だったんでしょうか?」

「直接ドリンクがかかってしまったのは、奥様だけのようでした。なのでガラスの破片も、他のお客様には当たっていないと思います」

清潔な乾いたナプキンをスカートや袖の裏に当て、とんとんと簡易のシミ抜きを手伝ってもらう最中、美しい彼女は「申し遅れました」と明るい声音で話し始めた。

「冷泉ビバレッジ秘書室に勤務しております、実友舞香(さねともまいか)です。
冷泉副社長の秘書を三年間務めさせていただいております。奥様には、ご挨拶が遅れてしまい大変申し訳ございません」

「あ、いえっ。副社長秘書の方だったんですね。……しゅ、主人がいつも、お世話になっております」

実際はそんなことを言って良い立場ではないが、一応妻らしく頭を下げた。

「すみません。シミ抜きまで手伝っていただいて」

「いいえ、当然のことでございます。クリーニング代は、冷泉ビバレッジがご負担させていただきますので会社へご請求下さいね」

秘書の実友さんは、白百合のような佇まいで美しく微笑む。
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