クールな御曹司と愛され新妻契約
「ち、違います。この涙は、そんなんじゃ……っ」
二十六歳にもなった妻が、ホテルのロビーで泣き出したら、そりゃあ……驚くよね。
一人で行動も出来ない我儘な女だと思われたくなくて、一生懸命首を横に振る。
本当に、千景さんのせいじゃない。
これは私の心の問題だ。
次々に溢れてくる大粒の涙を見て、彼は弱り切った声音で「参ったな」と呟くと、公の場だというのに突然私の唇を奪った。
呆気にとられてしまった私は、大きく目を見開いたまま、固まってしまう。
彼は周囲の目を気にすることもなく、私の悲しみを吸い出すように、唇の角度を甘やかに変えながら幾度かのキスをした。
ちゅっとリップ音を立ててゆっくりと唇を離した千景さんは、私の顔を覗き込んで穏やかな微笑みを浮かべる。
それから、ジャケットの胸ポケットから取り出したポケットチーフをそっと私の頬に押し当てて、私の泣き顔を周囲から隠すかのように、彼の胸に抱きしめた。
とんとん、とまるで幼い少女をあやすかのように、鼓動のリズムで私の背中を優しく叩く。
心から決壊していた悲しみが、段々と羞恥心に変わっていき、私は彼のベストに縋り付いた。
二十六歳にもなった妻が、ホテルのロビーで泣き出したら、そりゃあ……驚くよね。
一人で行動も出来ない我儘な女だと思われたくなくて、一生懸命首を横に振る。
本当に、千景さんのせいじゃない。
これは私の心の問題だ。
次々に溢れてくる大粒の涙を見て、彼は弱り切った声音で「参ったな」と呟くと、公の場だというのに突然私の唇を奪った。
呆気にとられてしまった私は、大きく目を見開いたまま、固まってしまう。
彼は周囲の目を気にすることもなく、私の悲しみを吸い出すように、唇の角度を甘やかに変えながら幾度かのキスをした。
ちゅっとリップ音を立ててゆっくりと唇を離した千景さんは、私の顔を覗き込んで穏やかな微笑みを浮かべる。
それから、ジャケットの胸ポケットから取り出したポケットチーフをそっと私の頬に押し当てて、私の泣き顔を周囲から隠すかのように、彼の胸に抱きしめた。
とんとん、とまるで幼い少女をあやすかのように、鼓動のリズムで私の背中を優しく叩く。
心から決壊していた悲しみが、段々と羞恥心に変わっていき、私は彼のベストに縋り付いた。