クールな御曹司と愛され新妻契約
そうして今更ながら、人目があることに恥ずかしくなった私は、「も、もう大丈夫です。ありがとうございました」ともごもごとお礼を口にしながら、彼の胸を押し返した。

「あ、あの、千景さん……」

「ん?」

「せっかく千景さんに買ってもらったドレスが、台無しになってしまいました。……ごめんなさい」

「もしかして、涙の理由はそれですか? 良かった、それなら俺が解決できそうだ」

千景さんは再び、私の服と髪に残ったアルコールの匂いがスーツに染み込むのもお構い無しに、ぎゅうっと強く抱きしめてから、私の頭に手のひらを乗せた。

甘い声音は、まるで『いい子いい子』とでも言い出しそうだ。

「フロントへ行って部屋を取ってきますね。熱いシャワーを浴びて、体を温めた方がいい。その間に、俺が麗さんの新しいドレスを買ってきます」

「部屋なんて、そんな、大丈夫です。服も乾いてきているので、このままタクシーで帰宅しますから」

すぐにフロントへ向かい出しそうな彼のスーツジャケットの袖を、咄嗟にきゅっと握って引き止める。
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