クールな御曹司と愛され新妻契約
もしかして、千景さんが次に何を言い出すか理解していて、先回りして、部屋の空き状況の確認を取っていたのだろうか。――それとも。

それとも、なんてあるわけない。……よね?


私が、千景さんのハウスキーパーになったのは、三年前。

つまりそれは、私と実友さんが、殆ど同じ年月を千景さんと過ごしているということになる。

けれど。ただのハウスキーパーなんかの私よりも秘書の彼女の方が、よほど千景さんを理解しているに違いない。

会社で副社長の彼を支えるなんて、絶対に私には無理だ。

悔しい。

ポツリと心の中で呟かれた言葉から、心の奥底にある清らかな泉へ、黒い雨粒が滲んだ。
それは一滴、また一滴と、濁った波紋を次々に広げていく。

私は千景さんとアイコンタクトで通じ合うなんて、出来ない。

それどころか、彼がホテルの部屋を取るなんて言い出すことすら、予想もしていなかった。

『負けた』と私が思うことすらおこがましいほど、千景さんとの関係性は、雲泥の差と言っていいかもしれない。

……本当に、私は、ただのハウスキーパーで……契約相手、なんだろうなぁ……。
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