クールな御曹司と愛され新妻契約
噂だって、少しくらいはあっているのかも。
例えば……実友さんと千景さんは、元恋人同士だった、とか。

実友さんが、千景さんのことを……愛している、とか。


心の中を嫌な感情が埋め尽くしていくのを、止められない。
黒い雨粒は、いつの間にか大雨へ変わり、私の世界にだけ降り注ぎ始める。


「やっぱり……必要、ないです」

「え?」

唇から溢れたのは、自分が思っていたよりも弱々しく、今にも消え入りそうな声だった。

「わ、私……先に帰ります。帰って、自分でクリーニングへ持っていきますから」

ここは、私が、立場を弁えなければ。
勢いよく立ち上がり、私はクラッチバッグの中に急いでスマホを詰め込んだ。

「わかりました。では、俺も一旦ここを出て麗さんを家まで送ります。今すぐ実友に話しを――」

「付き添いも、いりません!」

千景さんの言葉を遮り、私は大きく首を横に振る。

契約妻として彼の隣に並ぶ仕事は、こんなにドレスを汚してしまった時点で、果たせなくなってしまった。
こんな失態ばかりの私なんかに、わざわざ千景さんから優しくしてもらう資格はない。
< 139 / 192 >

この作品をシェア

pagetop