クールな御曹司と愛され新妻契約
千景さんに限って、提出し忘れるなんてことあるわけ――っ!

「……あ、った」

実家で見たものと同じ。
クリアファイルに挟まったままの婚姻届が、不備など指摘された様子もないまま、保管されていたのを目の当たりにして、私はその場で凍りついた。

「最初から……出して、なかったんだ」

婚姻届をクリアファイルから取り出す。

離婚……しようとしていたくせに、入籍していなかった事実を知って、酷い絶望感が押し寄せてくる。

この婚姻届が出されていなかったのは……やっぱり先月、実友さんが千景さんへ妊娠を打ち明けたからなのだろう。

きっとタイミング良く、彼が婚姻届を提出する前だったに違いない。
だから『冷泉』名義の印鑑を作るのも、不自然に止められたってことか。

それで明日――偽りのプロポーズから一ヶ月目という節目に、とうとう『契約結婚はできない』と、打ち明けてくれようと……。

「なんだ……そっか」

パズルのピースが全て揃い、あっという間に完成していく。
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