クールな御曹司と愛され新妻契約
土日は、俺の祖父母と父が住む実家でハウスキーパーを勤めていた麗さんと会話するためだけに、普段あまり帰らなかった実家へ顔を出すようになった。


そして彼女と出会ってから十ヶ月が経つ頃。

バレンタインデーの夜に帰宅し、ダイニングテーブルの上に有名な高級チョコレート店の箱が置いてあるのを手に取った時、まさかの贈り物に喉がゴクリと鳴り、歓喜で震えた。

【冷泉様、お仕事お疲れ様です。日頃の感謝の気持ちを込めまして、チョコレートをご用意させていただきました。季節物ですので是非食後のデザートとしてお召し上がりいただけたらと思います。いつもありがとうございます。三並】

なんて、まるでバレンタインの贈り物ではないような真面目で硬い文章の書かれたカードに『まったく彼女らしい』とクスクス笑った後、ふと心に影が落ちる。

……このチョコレートは、何も俺だけに宛てられたものではない。
彼女が向かう各家庭で、全く同じものが配られているんじゃないのか?

それだけじゃない。
きっとどこかの誰かが、彼女の愛が込もったチョコレートを受け取って――。
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