クールな御曹司と愛され新妻契約
お昼休憩頃に送られてくるお弁当の感想だって、今までスマホへ届いていた千景さんからの業務連絡と同じような文面なのに、以前よりももっと特別な感じがして嬉しくなってしまうのだから、重症だ。

……千景さんにだけは、自意識過剰な女性だって思われたくない。

彼がいくら毎日優しくても、まるで夫婦になったかのような錯覚に陥ってはいけないと思った。


私はテキパキと朝食の後片付けを済ませると、自室へ戻っていつものセットアップスーツに着替えてから、千景さんからもらった大切な結婚指輪を外してリングケースの中へそっと仕舞い込む。


――この指輪は、あの夜に貰ったものだ。

『今度は、素直に受け取っていただけますよね? あなたはもう俺の奥様ですから』

と、リビングルームのソファに座って夜景を眺めながらワインを開け、二人だけの小さな誕生日会を開いてくれた千景さんが、午前零時を回る頃にマリッジリングの並んだケースを差し出してきた。

そう言えば実家から出る時に、彼が『月曜日に婚姻届を役所へ』と言いかけていた気がする。つまり零時を回った時点で、既に契約結婚生活の第一日目が始まるということだった。
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