クールな御曹司と愛され新妻契約
作業をしていると、廊下からダイニングルームへ続くドアが開く音がした。
多分、千景さんがお風呂を終えたのだろう。

私は書類を作成している画面から目を離さないまま、カタカタとノートパソコンのキーボードを叩き続ける。

「ふう」

暑さに参ったような声音で千景さんが息を吐き出したのが聞こえてパソコンの画面から顔を上げると、カウンターキッチンの向こうでタオルを髪に掛けたままの彼が、冷蔵庫からペットボトルに入ったスパークリングウォーターを取り出しているところだった。

日本の天然炭酸水を使用したまろやかな口当たりときめ細かい炭酸が特徴のそれは、彼が副社長になってから自ら指揮を執り、プレミアムなパッケージに仕上げた冷泉ビバレッジの自社製品のひとつだ。

彼はカウンターキッチンから出てきながらペットボトルの蓋を捻ると、それを一気にゴクゴクと煽った。

スラリとした首筋が晒され、尖った喉仏が上下する。

彼の黒髪はしっとりと水に濡れていて艶めき、その毛先から拭いきれなかった水滴がつぅっと首筋から鎖骨へ流れて、ほどよく筋肉がついた引き締まった胸板へ伝った。
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