クールな御曹司と愛され新妻契約
ダイニングテーブルに置きっ放しだったパソコンやスケジュール帳を自室へ片付けた後、キッチンへ向かい、パジャマの上にエプロンを纏った姿で明日のお弁当の下準備に集中していると、背後からそっと抱きしめられた。

「ひゃっ」

うなじのあたりに千景さんの鼻梁を感じ、ドキドキしながら慌てて液晶パネルを操作して、ガスコンロの火を消す。

「も、もう! 火がついてるんですから、危ないですよ。突然どうしたんですか?」

毎日、溺愛されているような錯覚に陥る甘い時間はあれど、こうして夜深くに抱きしめられたことはない。

少し怒ったようなような声音で伝えながら、心の中はなぜ急に抱きしめられているの!? と混乱していた。

「あなたを誘いに来たんです」

千景さんは猫のように甘える仕草で鼻梁を私の首筋や後頭部に擦り付けながら、耳朶にそっと唇を這わせる。

鼓膜を揺らす声に反応してゾクゾクと体が痺れるような感覚が走り、「んんっ」と思わず声が漏れた。

「今夜から……夫婦らしく、一緒のベッドで寝ませんか」

耳元で低く甘い声音で囁かれた言葉に、どくんと大きく心臓が跳ねる。
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