無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
暫く真未と陽菜が楽しく話した後、急にバイトの子が来れなくなってしまったという連絡が入ったらしく真未は名残惜しそうに帰っていった。
バイト先まで送ると言ったのに、大丈夫!と笑顔で言われたら無理に着いていくことも出来ず駅までの見送りとなった。

「ふー……」

息を吐きながらだて眼鏡を外してソファーに凭れかかっていた陽菜は、極度の人見知りだと思えないくらい真未とたくさん話して満足した様子だったが、外から帰ってきた朝陽の姿を見て眉を潜めた。

「何?不満そうだけど」

「不満に決まってるでしょ。
どうして家の中なのに変装して真未ちゃんに会わないといけないの?」

ぷくっと膨れた陽菜の頭に手を伸ばしてそっと髪を持ち上げると、栗色のミディアムヘアーがふわっと出てきた。

「真未にはまだ内緒にしてるんだよね」

「そうみたいだね、この前公園で会ったのにパン屋さんで会ったときに“久しぶり”って言われたもの」

まだ話してないんだって思って驚いちゃった。と訝しげな視線を向ける陽菜に朝陽は目を細める。

「真未ちゃんは私がモデルやってるって知っても朝陽への態度は変えないと思うよ?」

「わかってるよ。
でも、真未の気持ちが揺らがないでしっかりこっちに向いてるってわかった時まで隠しておきたいんだよね」

そう言うと陽菜は目を丸くして、やがてその目を細めて柔らかく微笑んだ。

「なんだ、いつも自信満々な朝陽でも、真未ちゃんの気持ちが揺らいじゃうんじゃないかって心配になったりするのね」

「陽菜姉、俺だって人間なんだからさ。
心配しないことなんてないんだよ」

苦笑しながらそう言うと、うん、そうだね。と微笑まれた。
真未に関してだけは心配したり不安になったりもするんだけど、笑顔と言う名のポーカーフェイスを貫いてるからきっと本人には伝わらないんだろうなと朝陽はほんの少しだけ眉を下げた。
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