無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
“ごめん、暫く会えない”

朝陽の家に遊びに行った次の日に来たメールがこの内容で、それから暫くは同じ内容のやり取りだけが何週間か続いた。

“ごめん、今日も会えない”

“わかった。”

朝陽から毎日届く連絡に真未は簡単に返事をする。
亮太が言うには大学にも来ていないらしく、何かやっているようだと言っていた。
“何か”と言うのがストーカーっぽい常連に狙われてるらしい陽菜が関係しているのか、仕事関連なのか、はたまた全く違うのかまではわからないが、ここ最近はほぼ毎日一緒にいた朝陽とずっと会えてないのが何だか不自然にも感じた。

「この前までは講義が一緒だったっていうくらいで、姿を見なくても平気だったのにね」

すごく不思議に思えて首を傾げていたら杏子に呆れたような視線を向けられた。

「それだけ秋村君が隣にいることが当たり前になってたってことじゃない。
会えなくて寂しいんでしょ」

「寂しい?朝陽に会えなくて?」

キョトンとしながら杏子に言われた言葉を繰り返し、さらに心の中でも、寂しい……。と反復した。

「そっか私、朝陽に会えなくて寂しかったのか」

これは意外な発見だというように呟くと、杏子はあからさまに溜め息をついていた。

今度会えたときに会えない間寂しかったと伝えたら朝陽はどんな反応をするだろうか。
自分に好意を持ってくれた理由も聞きそびれていたから、それも一緒に聞いてみようと考えながら真未は杏子と大学を後にした。
< 118 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop