過去の精算


『結婚してくれる?』

彼からもらった嬉しい言葉。
母を亡くして、このまま一生家族を持つ事もなく、死ぬまで一人だと思っていたけど、好きな人にプロポーズされるなんて、こんなに嬉しい事はない。
ましてや、子供の頃初めて好きになった人からだ。
“ 初恋は叶わない ” と、言う人もいるけど、私の初恋は叶ったのだ。
最愛の母を亡くし、子供の頃から志していた医師の夢も失った私だが、今は誰よりも幸せだと思う。

お母さん、私、幸せになる。

彼からのプロポーズを少し悩みはしたけど、ずっと彼の側に居たい。ただそれだけの理由で、彼のプロポーズを受ける事にした。
正直不安が無い訳では無い。
楓 銀行頭取のお嬢さんとの縁談話が有ると噂に聞いてるからだ。
彼はそんな話、根も葉もない噂だと言うけど、もし、それが本当なら、いくら私達が愛し合ってると言っても、許される訳ない。

彼は、前谷総合病院の跡取りなのだから…
町のみんながこの病院を必要とし、彼を必要としているのだから、その時は、私が身を引くべきなのは分かってる。





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