過去の精算
「君、ヒロ君って言うだ?」
ヒロ君を含め、彼らはどう見ても私より若い。
二十代前半と言ったところだろうか?
「おねぇさん。
実はヒロ最近彼女にフラれたばかりでさぁ、良かったら慰めてあげてよ?」
「へー、ヒロ君フラれたの?」
「うるせぇー、ほっとけ!」
ちょっと、粋がってる様に見えるが、根は真時目なコ達だと思う。
入って来た時、みんな作業着のボタンを上まできっちり閉めて着ていた。
「ほっといて欲しいなら、声掛けないでくれる?」
ヒロ君は、私の言葉にうつむき、“ 店どこ?” と、聞いた。
「え?」
「あんたが働いてる店!
この辺で、この時間に銭湯来るって言ったら、キャバでしょ?」
へー鋭いじゃん?
「ライオンって店知ってる?
そこで働いてる。
良かったら皆んなで来て?
チャージ料くらいなら、おねぇさんが奢ってあげる」
私は、“ じゃーね “ と、銭湯を後にした。
銭湯の帰り、スーパーで少し買い物して、店に帰って来た。
カウンターの中に残っていた洗い物を済ませて、スーパーで買って来た鯖で南蛮漬けを作り、その他にも、キンピラなどを作って冷蔵庫へ入れた。
「よし! こんなもんでしょ?」
ここ(ライオン)のおつまみは、チーズと乾き物(ピーナツやアーモンド)しか無くて、お腹が空いても、それくらいしか食べるものが無いのだ。
まぁ、出前を頼んだら良いのだが、遅い時間配達してくれるお店は、お寿司屋さんくらいしか無くて、値段もそれなりにする。
だから、女の子達はなかなか自分から頼む事が、出来ない。
かと言って、お客さんに高いお寿司をねだると、良い顔はしないし、お酒の注文も減る。
お酒の注文が減れば、自分達の売り上げにつながらない。
その為、空腹だろうと皆んなお酒を飲むしか無いのだ。
だが、そんな事続けていては体に良くない。
だから、少しでもみんなの為になれば、と作ってみた。