過去の精算
「おはよう」
ママの出勤だ。
「ママ、これ食べてみてくれませんか?」
「なぁに?
え! これ、キャサリンちゃんが作ったの?」
「勝手な事してごめんなさい。
でも、皆んなの体の事考えたら…
ママも空きっ腹で飲むのは良くないと思うし…」
「そうね… 味は申し分無い。 美味しいわ!
じゃ、試しに今日から出してみましょうか?」
「ホント?」
押し売りはしない事を条件に、ママは許可してくれた。
「ママ、有難う!」
その日から、私が作った料理をお店で出す事になった。
初めは、舞さんが食べてくれて、次に朱里ちゃんが、美味しいと言って食べてくれると、お客さんまでも食べてくれる様になった。
値段を低めに設定していたからか、心配していたお酒の注文は減らず、寧ろ注文は増えていた。
これで、女の子達も安心して食べる事が出来る。
良かった…
ホッとしていると、ドアが開いて若い数人の男の子達が入って来た。
えっ
「ヒロ君! ホントに来てくれたの?」
「え? あんた…銭湯の?」
ヒロ君は、金髪のウィッグを付けてるのが、私だと分かると笑い出した。
「なにその格好?
マジ笑えるんだけど?」
「煩いわねぇ、私にも色々事情があるのよ!」
「あら? キャサリンちゃんのお客様?」
ママの言葉に、源氏名がキャサリンだと分かり、ヒロ君は更に笑った。
えーえー、笑いなさい!
自分でもキャサリンなんて名前、私の柄じゃないのは分かってますよ!
でも、仕方ないじゃない!
「で、こういう店に来るって事は、君達は未成年じゃ無いわよね?
確認の為に、身分証明書見せてくれる?」
さっき私を笑った仕返しだ!
「未成年にお酒飲ませたら、お店営業出来なくなるからね?」
ヒロ君以外は、“ 違うって!” と笑って、車の免許証やフォークリフトなどのライセンス証などを見せてくれた。
「へぇー皆んな20か? 若いねぇ?
で、ヒロ君は?」
ヒロ君は、年齢確認された事が屈辱だったのか、一人不貞腐れていた。
「年齢確認させてくれないと、お酒は飲まさないよ?」
私の言葉に、仕方なく財布から免許証を出し、テーブルへと置いた。
「随分免許証の写真若いね?
丸ぼーずだ! 可愛い!
高校生の時取ったの?」
しかし、彼は何も答えなかった。