過去の精算
翌日
夜勤も終わり通用口を一歩出ると、空を我が物顔にお日様が微笑んでいた。
「ちょっと寒いけど、いい天気!」
朝日が全てのモノを照らし、元気の源を注ぎ込んでくれる。
天気予報を見なくても、今日は一日良い天気だろう。
よし、今日は布団干して、シーツ洗おう!
カバンを自転車のかごへ入れて、鍵を開けた時、何処からか車のクラクションが鳴った。
辺りを見渡し音がした方を探すと、高級車に乗った前谷君が、顔を出した。
え?
「送っていくよ?」
「いえ、けっこうです。自転車ですので」
「ちょっと、君に話があるんだけど?」
やっぱり昨夜の口止めしたいんだ?
「昨夜の事なら、誰にも話しませんからご心配なく?」
「いや、その話じゃなくて、他の話なんだ」
他の話し?
他の話ってなに?
昨夜の事以外、私になんの話があるの?
なんの話かは気になるが、でも、彼の車に乗ってるとこ、誰かに見られたら困る。
「自転車で通勤してますので、話があるならここでお願い出来ますか?」
「良いけど、早い人はそろそろ出勤してくると思うけど?」
腕時計を見ると、確かに食事担当の人達が出勤してくる時間だ。
もし、ここで前谷君と居るところを見られたら、どんな噂が立つか分からない。
正直、余計な敵は作りたくない。
確かに、ここを離れるのが賢明だろう。
仕方ないか…
私は溜息を1つ付き、“ 分かりました ” と言って、彼の車へ乗り込んだ。
そして、私が乗り込むと直ぐに車は動き出した。
「あの…送って頂かなくて結構ですので、何処か人目のつかないところへ、お願い出来ますか?」
「人目のつかない所?
へぇー…君って結構大胆なんだね?」
「は?」
「カーセックスが好みだなんて、知らなかったよ?
まぁ仕方ないか?
こんな田舎じゃ、ラブホになんて行ったら最後、翌日には町中の噂になって、時の人になるもんな?」
「何言ってるんですか?
若先生が、話があるって言ったんじゃないですか!
話が無いなら、私帰ります!」
丁度、信号で止まっていたので、私は降りるべく、シートベルトを外し、助手席のドアを開けた。
すると、彼は私の腕を掴み、“ 悪い、冗談 ” と言った。
「少しからかっただけで、話があるのは本当なんだ。
悪いけどドア閉めてくれる?」
信号が変わり、後ろの車からのクラクションに、仕方なく私はドアを閉めた。