過去の精算

そう。院長先生には感謝してる。
私の父に恩義があるからと、ただそれだけの理由で、私達親子の力になり、とても親切にしてくれた。

「なぁ?
今、付き合ってる人いるの?」

車に戻って来ると、前触れも無く突然の質問に驚いてしまった。

「え?
いえ、居ませんけど…?
私みたいな地味女、誰も相手にしてくれませんから…
それに、男性と付き合う様な余裕は、今の私には有りません」

男性と付き合うなら、オシャレもしないといけないだろうし、借金があるうちは、お金をオシャレになんか使えない。

車へ戻ると「じゃ、俺と付き合ってよ?」と、彼は言い出した。

え?

「どんな理由で、おっしゃてるか分かりませんが、先生なら、私なんかよりもっと素敵な方がよろしいと思いますが?」

「いままで性欲処理さえ出来たら、誰でも良かったし、だれとも結婚する気は無かったんだけど、最近お袋が煩くてね?
孫の顔を早く見せろって?
だけど、君ならしても良いかなって思ってね?
争い事嫌いみたいだし?」

なにそれ?

「それにほら?
君は病院の評判落としたくないだろ?」

「それは、先生が誰と関係持っても、私は騒ぎ立てしないし、見て見ぬ振りしてくれるという意味ですか?」

「簡単に言ったら、そういう事かな?
それに、君も生活が楽になるだろ?
僕と結婚すれば、いくら残ってるか知らないけど、お母さんの残りの入院費払わなくて済むし?」

「兎に角、一度考えてみてよ?」と彼は言って、突然私の唇を奪った。

どうして…?

どんなに胸を叩き抗議しようと、聞き入れてもらえず、固く結んだ私の口を開かせ様と、彼は右手の人差し指を差し込もうとした。

「口開けろよ?」

首を振る私の顎を、彼は強く掴んだ。





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