過去の精算
「あいつは、その頃から生活が荒れ始めたんだ…
親父の未琴に対する愛情を知って。
だからと言って、俺は未琴を責めてるんじゃない。ただ、怖かった。
変わっていくあいつを…
勉強しろ! もっと良い成績をとれ!
それでは医者になれない! 君に負けるって毎日毎日、あいつに責めたてられ、このままだと本当に医者になれないと思った。
君と交わした約束も叶わないと思ったら…」
私との約束…
“ 一緒にオペを ” と言う約束…?
「いつか…君から父親を奪ったのが俺だと、君が知ったら……怖くて…
だから…俺は日本から逃げた。
誰も知らない、誰も俺を責めたりしない外国へ」
彼は、二度と日本に帰るつもりは、無かったと言った。
「じゃ何故…帰ってきたの?」
「・・・・・」
「やっぱり、この病院が欲しくなった?」
彼は暫く黙ったままでいたが、“ 欲しかった ” と言った。
やっぱり…
「じゃ、喜んで差し上げるわ?
私は何も要らないから!」
「違う!」
違うって何が違うの!?
怖くなって逃げたと言いながら、戻ってきた。
そして、たった今、欲しかったって言ったじゃ無い!?
「未琴…君が欲しかった…」
わたし…
「あいつから、親父は長くない…って連絡があったんだ。
多分、お袋は何処からか聞いたんだと思う。
親父が東京の病院で診てもらってる事を…
そして、親父の事だから、遺言書も残してるだろうって心配して、このままだと何もかも君に取られてしまうって、あいつは焦ったんだと思う。
それで、あいつは俺と君を結婚させて、病院を奪う計画を立てたんだ。
計画を聞いた時は、なんて女だって思ったよ…
自分の私利私欲の為なら、なんでもする女が自分の母親だと思うと…悲しみより、憎しみで頭がおかしくなりそうだった。
でも…もしかしたら、君を手に入れる事が出来るかも知れないと思った」
私を手に入れる?