過去の精算
「沙織と別れる時に約束したんだ。
医者を志した時の気持ち、看護師を志した時の気持ち、その頃の気持ちを互いに忘れず、この町の人達の為に死ぬまで尽くそうと…
私達は離れてしまっても、生まれてくる未琴に私達の想いを継いで行って貰えたら…
勝手だがそう私達は思っていた。
いつか、医師になった未琴にこの病院を託し、この町の人達を見守ってほしかった。
その為にも、私は病院を守らなければいけなかったんだ」
だからって…
私達を見捨てた理由にはならない!
「沙織の病が分かった時、私は援助を申し出た。
だが、沙織は決して首を縦に振らなかった。
私の家族に迷惑はかけれないと…
その代わり、自分が逝なくなって未琴が道に迷った時には、力を貸してやって欲しいと…
私の手を握って…宜しく頼みますと…」
「お母さんが…」
「だから、未琴には医大に行って欲しかった。
沙織の為にも…
本当に…すまなかった…」
その時、前谷君の顔に陰りが見えた。
まるで、自分を責めてるかの様に私には見えた。
彼も言わば被害者なのに…
「今まで、黙っていて…
今更、許して欲しいとは言わないが、町の人達の為にも、この病院を継いでくれないだろうか?
沙織の残したこの病院を」
「お断りします!」
なんでこの人は勝手なの…
また、自分の身勝手な思いで彼を傷つけるの?
これ以上、彼を傷つけないで!
「未琴…」
「私の父は、私が生まれる前に死んでるんです!
あなたは、私の父でも何でもない!
今更、町の人達の為とか綺麗事言わないで!
いくら母が別れを言ったからて、それは母の本心じゃない!
あなたは、町の人達の為と言って母を捨てた!
そして、私を捨てたんです!
それが全て!」
「未琴ちゃん落ち着いて!」
ママは私の肩に手を置いて、落ち着かせ様とした。
「私はちゃんと落ち着いてる!」