過去の精算

「そう。良かったわ!
私の事が嫌いで、逃げてるのかと思ってたのよ?
でも、違うみたいで安心したわ?」

嫌いでは無いけど、凄く苦手です!
流石に、本音は言えないけど…

「じゃ、お茶付き合ってくださる?」

は?

「帰りは和臣に送らせるから?」

「あの私……」

「もう、逃げたりしないわよね?」

「・・・・・」

もう、どうなってるの?
この親子は、私に何がしたいのよ?

院長夫人の誘いを断ることが出来なかった私は、そのまま、院長宅へと連行されたのだ。

「足、どうされたの?」

「え?」

「朝も、左足を引きずっていたでしょ?」

あぁ、気づかれてたんだ…

「昨日、ちょっと挫いてしまって…大した事は無いです」

「あら、大変!
先生には診て頂いたの?」

「いえ、ホントそこ迄では無いので…」

「捻挫を甘く診てたらだめよ?
今からでも診てもらいなさい。
あっ主人に診てもらいなさいな?」

「いえ、本当に大丈夫ですので!」

「主人が嫌なら、和臣に診てもらった方が良いかしら?」

院長先生が嫌な訳じゃなくて、本当に大したことないって事なんだけどなぁ…
院長先生より、前谷君に診て貰う方がよっぽど嫌だし!

「じゃ、足の事は後にして、冷めないうちにどうぞ?」

勧められた、院長夫人自ら入れてくれた、アップルティーを有り難く頂く事にした。

「如何かしら?」

「はい…美味しいです」

「そう? 良かったわ。このアップルティーはね?
取り寄せたリンゴを一晩ミネラルウオーターに浸しておくのよ? それから」

院長夫人は、頼みもしないアップルティーの淹れ方の、講習会を始めた。

わざわざ取り寄せた良い林檎を、アップルティーに使わなくても、良いのに…
貧乏人の考え方かも知れないけど、絶対そのまま食べた方が美味しい筈だ。
お金持ちの考える事は良く分からない。

私は心の中で首を振り、夫人の話をいつ終わるのかと、小さく溜息をついて聞いていた。

いつまで、この話続くのかな…?
辛い…
もう、帰りたいよ…

「あの・・・とても美味しいアップルティー有難う御座いました。
そろそろ・・・」
前谷君が仕事してるうちに…
彼が戻って来る前に帰りたい。

「あら、まだ良いじゃない?」

「いえ、随分長居してしまって……
これから夕飯の買い物にも行きたいので、これで失礼を…」

「お夕飯なら、うちで食べていけば良いわ?」

冗談じゃない!
「いえ、そこ迄ご迷惑かけるわけには…」
立ち上がったその時、リビングのドアが開いた。

!?…




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