過去の精算

「待たせたな?」

振り返れば、にっこり笑う前谷君が立っていた。

あー帰って来ちゃった……

「さぁ、送って行こうか?」

何処へ?
…何処だろうと、貴方に送ってもらうつもりないですけど?

「いえ、寄りたい所が有りますので、結構です」

「和臣、木村さん、お夕飯のお買い物して、帰りたいそうよ?」と言う院長夫人に、思わず溜息が出そうだった。
余計な報告要らないのに……

「そう?
じゃ、買い物にも付き合うよ?」

はぁ?
なぜ…?

「いえ、お断りします。 私ここで失礼致します」
一礼して、私は玄関へと向かう。

だが、玄関へ向かう私の行く先を阻止する様に、彼は立ちはだかった。

「な、なに?」

「足?」

足?

「昨日、あの時に痛めたんだろ? 診てやるよ?」

「いえ、結構です!」

「キャッ!?」

彼の舌打ちが聞こえたと思ったら、突然肩に担ぎ上げられてしまったのだ。

「ちょっちょっと何するのよ!?
早く下ろして!」

「このまま、検査に連れられて行くか、大人しく俺に送られるのと、どっちが良い?」

担がれて病院に戻ったりしたら…
でも、送られるのも嫌だ!

「あー今日は、新人の院内説明会があるとか言ってたな?
今頃、研修医や新人ナースが、事務長に連れられている頃だな?」

はぁ?
そんな所に連れられて行ったら、如何なる事か…

「わ、分かったから、下ろして!」

彼に降ろされた私は、大きな溜息を吐くと、降参と両手を挙げた。

私ではこの人に太刀打ち出来ない。
諦めるしかないわ…
悟った私は、彼へ条件を出した。

「でも、1つだけ約束して、この間の様なことは、絶対しないで!」

「あゝ分かった。
君が処女じゃなくなるまで、手は出さない」

はぁ!?
処女じゃなくなるまでって…
言ってる意味が訳わかんない!
でも今度何かしたら、訴えてやるんだから!




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