過去の精算
院長宅を出る際、誰かに見られてないか見渡しながら、前谷君の車へと乗りこんだ。
なんで私がここまでしなきゃなんないのよ!
私、なにも悪い事してないのに!
「あっ!」
突然の私の声に、彼は驚いた様で目を丸くしていた。
「なんだ、どうした?」
「やっぱりダメ!」
「は?」
「自転車!
今日は自転車乗って帰らないと困る!」
明日、林さんとの約束がある。
それに…
「自転車なら、明日でも良いだろ?」
「ダメ!
明日は約束があるの!」
「約束って、明日も仕事だろ?」
「明日は……私休み貰ってる…」
「休みって……何のために?」
「何の為だろうと、若先生には関係ないと思います!
事務長にはちゃんと許可貰ってますから、なんの問題も無いですよね!?」
「もしかして男か?
男とデートする為に仕事休むのか!?」
前谷君は何故だか興奮して、私の腕を掴んだ。
痛っ
なんでそんなに怒るの?
「……あなたに答える義務有りません!」
「答えろ!
なんの為に休む!」
前谷君は怒りを露わにし、掴んでいた手に力を加えた。
「痛い!離して!」
なんで、貴方に答えなきゃいけないのよ!
あー面倒くさい!
「そうよ!
男の人と会う為に休むの!
これで満足?
早く手を離して!!」
彼は私の返事に満足したのか、“ 分かった ” と言って、手を離してくれた。
そして私は彼の車から降り、自転車で自宅へと帰った。