過去の精算
翌日、林さんのお宅へと伺った。
「幸子さん、おばあちゃんの事は心配しなくていいので、ついでに地域包括支援センター窓口で、おばあちゃんの介護について相談して来て下さい。きっと、幸子さんの力になってくれると思いますので?」
地域包括支援センターは、地域によって呼び方は違う様だが、市区町村に必ず設置されていて、保険・医療・福祉の面から専門的な支援を行う機関の事。
地域包括支援センターには、ケアマネジャー・保健師・社会福祉士が在籍しており、高齢者の方やそのご家族の悩みや心配ごとの解決方法を提案してくれたりする。
「でも、それでは随分遅く…」
「私の事は大丈夫ですよ?
夕方まで予定有りませんから、なんなら買い物して来てくださっても構いませんよ?」
林さんが出かけた後、おばあちゃんの話し相手をしていた。
話し相手と言っても、私が一方的に話すだけなのだが…
「おばあちゃん、ぶり大根ってどうやったら、美味しい味になるのかな?
何度作っても、お母さんの味にならないの…
何が違うんだろう?
もう一度、食べたいなぁ…おふくろの味ってやつ?」
今日のおばあちゃんは、あまりご機嫌が良くない様だ。
私の話になにも応えてくれない。
林さんが留守だとダメなのかな?
そろそろお昼という時、おばあちゃんは林さんの名前を呼んだ。
「おばあちゃん、幸子さんは今、お出かけ中だから、お昼ご飯は私が用意してくるね?
ちょっと待ってて?」
幸子さんが用意して置いてくれた、ご飯を温めていると、(ドンッ!)と大きな音がした。慌てて見に行くと、ベット横にあった三段ボックスが倒れていた。
えっ!?
何があったの?
「おばあちゃん!おばあちゃん大丈夫?」
見た感じ、おばあちゃんに怪我はない様だが、心配になった私は、病院に電話をして往診を頼んだ。