過去の精算
「こんな野菜、買ってあったか?」
彼の買った野菜には、ジャガイモやタマネギはあっても、小松菜やニラ、人参は無かった。
勿論、切り干し大根も無い。
「ええ。有りませんでした。ですから買い足しました。もしかして、先生は野菜嫌いでした?」
「っな訳無いだろ!ちゃんと食えるし!」
「ですよね?
子供じゃ無いんですから、好き嫌いなんて言わないですよね?
偉そうに、“自分の側に置く女には” とか言う人が、子供みたいに野菜が嫌いで、食べれないなんて、恥ずかしすぎますもんね?」
「偉そうにって?お前な!」
「あれ、怒っちゃいました?カルシウムが足りないと、怒りぽくなるそうですよ?
ほら、小松菜沢山食べて下さい?」
前谷君は、子供の様に口をへの字にして悔しそうにしていた。
私は、小松菜と千切りにした人参と切り干し大根を、少し豚肉で巻いて、昆布出汁に潜らせ。そして、彼のポン酢の中へ入れる。
「はい! 子供じゃないなら、食べれますよね?」
前谷君は目を瞑り、“ えい!” と言わんばかりに、口の中へと放りこんだ。
「ん?」
どう?
「美味い!」
「なんだ、ただの食わず嫌いだったんじゃ、ないですか?」
「違う。何度も食べようとしたんだ…
でも、いつも口に入れただけで、吐きそうになって…だめだった。
でも、こんなに美味いとは…」
「じゃ、体が欲してたんじゃないですか?」
「いや、君が俺の為に作ったからだと思う」
「先生の為?
それは違います。
利息分の為です!
食材も無駄にしたく無かったし?」
「それでも、栄養面を考えてくれた。オペを終え疲れているだろう俺の為に?
疲労回復のためのメニューを?」
「違います!」
「違わない!
俺も医者だ、多少なりの知識はある!」