過去の精算
お昼休憩の時に、休憩室へ向かう際、嫌な話しを耳にした。
『おい、聞いたか?
前田が、事務の木村さん落としたって?』
私を落とした?
『マジか…
あの人、絶対落ちないと思ったんだけどな?』
『お前いくら賭けてた?』
賭け?
『1万』
『俺なんか2万だぜ?
クッソ! 大損だよ!』
『しかし、アイツも良くやるよな?
彼女が居ながら、賭けとはいえ、彼女と同じ職場の女に手出すとはな?』
『マジで彼女にバレたら、大変だろうな? 泥沼だぞ?』
『澤って子も気が強そうだしな? ひょっとして、血を見るかもな?』
『怖っ!』
『まぁそのてんは良いよな、ここ病院だし? アハハ…』
澤さんって…
あの澤さん?
私は急いで食事を終わらせると、食堂にいる澤さんのもとへ向かった。
「澤さん、少し時間良いですか?」
「え? ええ」
私は、澤さんを、ひとけのない非常口へと連れ出した。
「単刀直入に聞きます!」
「は、はい…」
「澤さんは放射線技師の前田先生と、お付き合いされてますか?」
「えっ?なんでそれを?」
やっぱり付き合ってるんだ?
でも、この様子だと、職場の皆んなには内緒にしてたのかな?
「私、前田先生と二人で、昨夜お食事に行きました」
「えっ!」
「誤解しないで下さい!
本当に食事に行っただけで、本当は前田先生のお祖母様も……」
私は、昨夜にいたるまでの経緯、全てを澤さんへ話した。
「勿論、前田先生へ好意を持って無かったか?と聞かれたら、持って無かったとは言いません!
でも、それは澤さんに対する気持ちと同じ気持ちで、それ以上の気持ちじゃありません!
それに今は、そんな気持ちも無くなってます!」
彼に対する、信頼も尊敬も今は全く無い!
「さっき、他の技師の方達が話してたのを聞いて…」
技師の人達が話していた事も全て、澤さんに話した。
「なので、前田先生も私に特別な感情持っていないと思います。
他の方から、間違った情報が耳に入ると困るので、全てを話しました。
それから…今日も食事に誘われてますけど、お断りの伝言、澤さんにお願いしても良いですか?」
澤さんは初めこそ不快感を示していたが、私の話を分かってくれた様だった。
「分かった!」
「有り難う御座います」
「あっ木村さん、この事は誰にも…」
「勿論、誰にも話すつもり有りません」
私は澤さんに頭を下げ、仕事へと戻った。