過去の精算

出勤すると、大勢の痛い程の視線を感じた。
それは数日前の私と、全くの別人になっていたからだろう。

「おはよう…えっ?
木村さん? それどうしたの?」

「アハハ…ちょっと切りすぎましたかね?」

皆んなからの問い掛けに、私は笑って応えていた。

数日前までの、茶色だった色は黒に戻し、長かった髪はベリーショートに切っていた。
そのうえ服装はGパンにTシャツ、まるで男の子だ。いや、男の子と言うより、歳も歳だけに化粧してる分オカマに近いかもしれない。

「木村さん!ちょっとあなた何があったの?」

着替えを済ませて、持ち場に就こうとした時、澤さんに捕まってしまった。

「なんでも無いですよ?」

「なんでも無い事ないでしょ?
昨日だって急に休むし!」

「あ、昨日はすいませんでした。
熱が出ちゃって…」

「嘘っ! 熱が出たなんて嘘でしょ?
いつも体には気をつけてるあなたが、熱なんて出すわけない!」

「そんなぁー
私、機械人間じゃないですよ?
熱くらい出しますって?」

「じゃ、その頭ナニ!」

「あーこれですか?
ブローするのが面倒になって…
やっぱり、似合わない事はしない方が良いですよね?
朝からブローするのって大変ですよね?
短いとホント楽ですよ?
あ、そろそろ席に着かないと、まずいですよ?」

私は、澤さんから逃げる様にして、自分の持ち場に就いた。

「田所さん、本日のお会計は850円です」

「あら、木村さん随分短くしたのね?」

「どうです。似合いますか?」

「美人さんは何をやっても似合うから、良いわよね?」

「美人に生まれてたら、人生もっと変わってましたよ?」

「あら、充分美人だと私は思うわよ?」

「ありがとうございます。 お大事になさって下さい」




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