過去の精算
初日の今日はずっと、舞さんのヘルプに付いて、暫く仕事を覚える事になっていた。
慣れない仕事に、お酒はこぼしそうになるし、やった事の無いライターの点けるタイミングは難しい。
「お疲れ様ー!」
「ねぇねぇ、帰りラーメン食べて帰らない?」
朱里さんの誘いに、“ ごめんなさい ” と断り、着替えだけを済ませるとタクシーで帰って来た。
慣れない仕事はホントに疲れる。
化粧落とすことさえ、面倒だと思うくらいだ。
私は部屋に入るなり、そのまま眠りについていた。
翌日目が覚め、私は鏡を見て後悔の溜息を漏らす。
はぁ…
やっちゃった…
帰りのタクシーの中までは、絶対落とさなきゃって思ってたのに…
寝ちゃったんだ…
結構飲んだからなぁ?
お客は、私が新人だと知ると、挨拶がわりにとお酒を勧め、そして、お酒が強いと知ると、更に勧めて来たのだ。
お陰で、舞さんには喜んで貰えたけど、ほどほどにしないと、身がもたない。
再び、大きな溜息をついて、風呂場へと向かう。
タクシー代も出来るなら節約したい。
どうにかならないかな…?
「そうだ!」
店に出勤すると、ママへ相談して許可をもらえる事になった。
「ねぇ、今日は? 私が奢るから行かない?」
再び、朱里さんの食事の誘いに、今日も私は断る。
「ごめんなさい。店の掃除して帰る事になったから?」
「えっ!
今から、店の掃除するの?
ママ、人使い荒い!」
「違うの、私がお願いしたの」
今日出勤した際、タクシー代を節約したいから、始発の時間まで店に居させて欲しいと、ママにお願いしたのだ。
「ちゃんと別料金貰わないとだめだよ?」
「うん、心配してくれてありがとう」
みんなが帰った後、店の掃除を済ませると、ウィッグを外し、化粧を落として、始発の時間まで一眠りさせて貰う。
携帯電話のアラームで目を覚ますと、帽子を被りマスクをして店を出る。
この歳になって、まさかノーメイクで電車に乗るはめになるとは思ってもなかった。
でも、これでタクシー代が随分浮く。