過去の精算
キャバクラ【ライオン】で、働き始めて5日が過ぎた朝、自宅であるアパートへ帰ると、見覚えのある高級車が停まっていた。
なんで…いるの…?
こんな朝早く…
私の姿に気がついたのか、運転席から前谷君が降りて来た。
「なにか…ご用ですか?」
「朝帰りか? いいご身分だな?」
「お陰様で?
楽しく過ごさせて頂いてます。
謹慎中でも、遊びに出掛けていけないとは言われてませんから?」
私は子供じゃない。
朝帰りしようと、誰に咎められる事もない。
ましてや、彼に文句言われる筋合いはない。
「部屋に入りたいので、そこどいていただけますか?」
彼が一歩ずれてくれたので、鍵を開け部屋に入りドアを閉めようとしたが、彼はドアを閉めさせないとばかりに、右手をドアの隙間に差し込んできた。
「痛っ」
あっ…
大事な右手…
「話がある」
「私には有りません!」
彼の手を押し退けようとするが、彼は一歩も譲ろうとせず、ドアに右手を挟んだままでいる。
「ちょっと!
大事な右手痛めたらどうするの?」
「そう思うなら、開けろ!」
「嫌!」
「じゃ、このままでいるしかないな?」
このままって…
大事な右手…痛めたら…
「ほんとズルい人ね?」
仕方なく玄関へ招きいれる事にした。
「私、疲れてるので、早く用件すませてお帰り頂けますか?」
「勿論、話が済んだら帰る。
金の事だが…」
「ああ、お金の事ですか?
心配しなくても、ちゃんと返すって言いましたよね?
もしかして、借金踏み倒して逃げるとでも思いました?」
数時間前に貰ったばかりの封筒を、鞄から出し彼に突き出した。
「取り敢えず、ここに五万入ってます」
来月からは、もっと返せると思いますので!」