過去の精算
前谷君がうちに訪ねて来てから、三日後、謹慎処分は解除されたと連絡が入った。
出勤すると、いきなり澤さんに捕まり、休憩室へと連れていかれた。
「澤さん、私、着替えて準備しないと?」
「大丈夫、事務長には許可貰ってる!」
許可って…
え? なにが有ったの?
「検査技師の前田さんクビになった!
それから、賭けしていた猪熊さんと、猿渡さんその他3名は、厳重注意になったって!」
えっ!
前田先生がクビに…なったんだ?
じゃ、澤さん達は…
「澤さん…ごめんさない。
私なんて言ったら良いか…
えっ! でもどうして?
私、澤さん以外誰にも話してないよ?」
「うん。私が院長先生に話した」
「えっ!」
「実は私、前田さんと付き合って無かったみたい?」
「え?」
どう言う事?
澤さんの話だと、前田先生と付き合っていたのは稲田さんで、澤さんも賭けの対象だったらしい。
澤さんは元々前田先生に好意を寄せていて、食事に誘われた時は嬉しくて、前田先生に勧められるまま、ワインを飲んで酔いつぶれ、気がついた時はホテルのベットの上だったと言う。
それって…
確信犯じゃない?
もしかしたら…私も…
考えただけで、恐怖で体が震える。
前田先生は、訴えられては困ると思ったのか、澤さんに、“ 結婚を前提に付き合ってほしい ” と、言ったそうだ。
プロポーズしておいて、付き合ってる事は内緒にって…
それって…詐欺?
婦女暴行?
「それで稲田さんは?」
「あの人も昨日で辞めたわ」
「そっか…
稲田さん辞めてどうするんだろう?
前田先生と結婚するのかな?」
「どうだろう?
あの人の事も、賭けの対象だったんじゃないかな?
前田さんって凄く野心家だから?
稲田さんの様な女(ひと)じゃ、満足出来ないんじゃないかな?」と澤さんは言う。
野心家…っか…
人は少なからず、野心家の部分はあると思う。
出世したい、お金持ちになりたい…
人それぞれ想いは有るだろうが、ただそれを表に出すかどうかだ。
「若先生、凄く木村さんの事心配してたよ?」
前谷君が私を?
「へぇー…
事務員が何人も辞められても困るものね?」
「ううん。そうじゃ無くて…
木村さんが傷ついたんじゃないかって…
前田さんを殴ったらしいし?」
前谷君が…前田先生を…殴った?
「いつ?」