過去の精算

翌日、ママは朝イチで検査の為、当院へ来てくれた。

昨夜、救急搬送された人の中には、特にキャリアの人はいないと、搬送先の病院から連絡があったと前谷君から、朝、連絡うけていた。
勿論、ママの血液検査にも、感染症の疑いも無かった。が、肝臓の数値と、血圧が高いという事で、暫く通院してもらう事になったそうだ。

「ママ、お酒控えてね?」

出勤した際、ママへ体を大切にして欲しくて、注意したが、馬の耳の念仏と言った所で、笑われてしまった。

「あら、それは私に死ねって言ってるのかしら?
私達の商売、飲んでなんぼの世界なの!
飲まなきゃ、お店潰れちゃうわ!」

確かに、お客さんに飲んでもうだけじゃなく、ママは勿論、女の子達も飲まなきゃ売り上げに繋がらないけど、でも…体壊したら元も子もない。

「それにしても、昨日のキャサリンちゃん、カッコよかったわ!」

「事務員だなんて、嘘見たい」

昨夜いた女の子達からも、賞賛の声を貰った。

「思い出すわ…」

え?

ママは懐かしそうに、昔話を始めた。

「40年近く前になるかしら?
ここで働いていた姪が産気づいちゃって、私も経験ないから慌てちゃってね?
そうこうしてるうちに、破水しちゃったのよ!
救急車はなかなか来ないし、困って居たら、通りがかりのカップルが助けてくれてね?
後から聞いたら、お医者さんと看護婦さんだったのよ?
あの時はホントラッキーだったわ!
あの時のお医者さんも、カッコ良かったわ!
看護婦さんも、職業柄だろうけど手際の良い人だったわね!
あっ、今は看護婦じゃなくて、看護師って言うんだっけ?
あの時のお医者と看護婦さん、良い感じだったけど、結婚したかしら?
そう言えば、あの時の看護婦さん、なんとなくキャサリンちゃんに似てるかも?」

40年前…?
もしかしたら、父と母…?
そんな偶然無いか…?
!?

「えっ! ママ、40年前って… 今、ママいくつ…?」

「あらやだ!
この業界のママ達に、歳を聞くのはタブーよ?」とママは笑った。

恐るべし夜の蝶…
いや、雌ライオン。




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