過去の精算
「前谷君? どうかした?」
「いや、何でもない。
他のも見て良いか?」
良いと言うと、彼は新たなビデオを見出した。
「これは…」
彼が見てるのは、頭部のMR画像だった。
「どうしたの?」
「このMR画像は…こども」
「えっ! 子供なの?」
「クマ目下出血症状を示す、血栓が生じた動脈瘤周辺に、広い範囲にダメージうけてる。
これだと助かったとしても、右半身麻痺が出てるだろうな…
「え?」
「多分脳死だろう…」
「脳死…?」
「あゝ、多分交通事故かなにかで、頭部を強く損傷しての事だろう?
亡くなってると思う…」
「そんなぁ…」
子供が…
親はどんなに悲しんだことか…
「でも何で…」
「え?」
「君は脳外科目指してたのか?」
「ううん。特に脳外科を目指してたわけじゃないよ?
私の父が外科医だったって聞いてたから、同じ外科医を目指してただけ…
でも、どうして?」
「いや…何でもない」
それからの前谷君は、口数も少なくなり、疲れてるのかと思い、私はお風呂を勧めた。
「お風呂沸かしたから、入って?
着替えはお風呂の入り口に用意しておくから?」
「…うん。 じゃ、先に入って来る」
彼がお風呂に入りに行くと、私は直ぐにコンビニへ彼の着替えを買いに走った。
(トントン!)
お風呂場のドアをノックしたけど、彼の返事は無く、なぜか不安になった。
「前谷君! 着替え、少し小さいかもしれないけど、私のスウェットここに置いとくね?
前谷君、聞こえた?」
「…あゝ、聞こえた。 有難う」
彼の返事を聞いて、ホッとした。
だが、彼が苦しんでる事を知るのは、まだ、ずっと後のことだった。