過去の精算
お風呂を出ると、なぜか彼の着替えが置いてある。
なぜ…?
商店街まで買いに行かなきゃって、思っていたのに…
まさか裸の彼が自分で買いに行く訳ないし…
じゃ、誰が…?
私が出た後、彼も直ぐにお風呂から出て来た。
「ねぇ、これ…着替えどうしたの?」
「ああ、さっきピザと一緒に持って来て貰った」
ピザと一緒にって…
誰に?
「未琴、中谷って覚えてない?」
中谷…
そう言えば、前谷君といちばん仲が良かった人で、いつも一緒にいる事から、みんなから二人はダブル谷と呼ばれていた。
二人は互いを、前、中と呼び合っていた。
「ダブル谷…」
「そう! その中が、イタリアンの店出しててさ?
ピザと一緒に着替えも持って来て貰った!」
「ちょっと待って!
中谷君…に、ここ(私の家)知られたの?」
「ん? ダメだったか?」
「ダメって言うか…」
「中、未琴にも逢いたいって言ってだぞ?」
中谷君に知られた?
私達の関係を…?
どうしよう…
院長先生や、院長夫人に知れるのも、時間の問題かも…
始まったばかりの私達の関係は…これから…
「未琴?」
「あっ、ごめん。 何でもない。
ピザ、冷めないうちに食べよう?」
ピザの箱に書かれた、ロマーリア。
中谷君のお店ロマーリアって言うんだ…?
確か、前田先生が言ってたイタリアンのお店もロマーリアって言ってた気がする。
結構人気のあるお店なのかも…
前田先生と行かなくてホント良かった。
中谷君のピザはホント美味しくて、私達は何度も “ 美味しいね ” と、顔を見合わせていた。
「誰かと食べる食事は、ホント上手いよな?」
確かに、一人で食べるより、誰かと一緒の方が美味しいと思う。
誰に褒めてもらうでも無く、自分が作った物を自分一人で食べるのは、寂しい。
彼に始めて作って、“ 美味しい ” と、言われた時、どんなに嬉しかったことか…
「中のピザも上手いけど、未琴の作る料理もホント上手いよな?」
「じゃ、また作ってあげるよ?」
「今夜は?」
今夜…
「良いけど…」
ピザを食べ終わる頃には、雨も止んでいて、予定通り買い物に行く事にした。
車でデパートまで行くと彼は言ったが、また、高級食材を買われては困ると思って、近くの商店街に行く事にした。
だが、彼には少し離れた場所で、待ってて貰うことにした。
「らっしゃい!
未琴ちゃん…と、若先生?」
えっ!
八百屋のおじさんの発した言葉に、驚いて振り返れば、車で待っているはずの前谷君がいた。
なんで…
待っててって言ったのに…
「あ、えーと、今度商店街のお休みの日に、健康診断を受けて貰おうと思って、若先生に皆んなを説得に来て貰ったの…
ほら、皆んな忙しいって言って受けてくれないでしょ?」
「確かに月に一度の休みは、皆んな色々やりたい事あるからなぁ?」
「忙しいのは分かるけど、そこをなんとかして、健康診断うけてくれないかな?
若先生も、こうして来てくれてるんだから?」
「若先生にわざわざ来て貰って、断る訳にいかないかぁ?
じゃ、皆んなには、俺から話しておくよ?」
「有難う…お願いします」