独占欲強めの部長に溺愛されてます
それもお姫様だっこという信じられない状況。
焦るいっぽうの野々花だが、かといって絶賛発熱中の身体では抵抗もままならない。
「大丈夫ですからっ」
声をなんとか絞り出してみても、加賀美の耳を素通り。涼しい顔をして軽々と歩を進める。
「部屋はどこだ」
「それより下ろしてください……!」
「歩けないんだからおとなしくして。これは上司命令」
そう言われてしまえば、たてつくわけにはいかない。しゅんと肩を落として、加賀美の腕の中で身体を小さくする。
ただでさえ熱があるのに、とんでもないシチュエーションのせいで心臓は大きく跳ねるし、顔だって湯気が出るほど熱い。
「……階段を上がって、二階の右端です。すみません」
ぼそぼそと言って頭を下げる。バッグから鍵を取り出して、おとなしくされるがままになった。
トントントンとリズムよく加賀美が階段を上がる。人をひとり抱きかかえているとは思えない軽い足取りだった。