おじさんは予防線にはなりません
「うちで働くのはなにかと大変だと思うけど。
できれば長く勤めて欲しい」

さっきまでの軽い調子とは違い、眼鏡の奥からまっすぐに見つめてくる。
その視線はあの影の薄い課長やさっき私を怒鳴った女性社員とは違い、この人は頼っていいんじゃなかなって思わせた。

「……できれば」

「うん。
本多さんは頼りないかもしれんけど、おじさんでよかったらいつでも相談に乗るし、愚痴だってつきあってやるからな」

くいっと眼鏡をあげ、男性社員は椅子を立った。
立つときちらりと、左手薬指に既婚者の証しが見えた。

「……よろしくお願いします」

「じゃあ、頑張れよ」

ひらひらと手を振って、彼は去っていった。

……なんだったのかな。

気が向いて、手の中で弄んでいたパインアメを口に入れる。
どこか懐かしい味のそれは、私に元気をくれた。
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