おじさんは予防線にはなりません
離そうとした右手は指を絡めて逃げられないように、ぎゅっと握り直された。
涙がこぼれ落ちそうになって、慌てて鼻を啜って顔をあげる。

「……わかった」

目の合った宗正さんはいつもの可愛い顔じゃなく、凛とした顔をしていた。
その顔に心臓が切なげにぎゅっと締まる。

……どうして私は、この人を愛せないんだろう。

「ほら、これちょっとはめてみて。
あ、でも、それよりこっちがいい?」

気持ちを切り替えるようにぱっと宗正さんが笑い、担当についていた女性店員がすんと軽く鼻を啜った。
もしかして一連の流れで、恋愛ドラマなんかでよくあるいい話と勘違いされたんだろうか。

「ありがとうございましたー」

見送る店員の顔にはあきらかにお幸せにって書いてあって大変申し訳ない。


店を出て近くのカフェに入った。
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