おじさんは予防線にはなりません
「今日は家まで送っていったらダメかな」

じっと見つめる茶色い瞳に私は、思わずいいよと返事をしていた。

ひとり分空いていた席に私を座らせ、宗正さんは前に立った。

なにか話した方がいいんだろうけど、なにを話していいのかわからない。
宗正さんも片手は吊革に掴まり、片手はポケットにつっこんで私と目を合わせないようにしている。

微妙に気まずい時間を過ごして電車を降り、改札を抜ける。

「詩乃んちってここからどれくらい?」

駅を出るとさりげなく、宗正さんの手が私の手を握った。

「……十五分くらい」

振り払う気はないが、かといって握り返すことはできない。

「そう。
遅くなったら心配だね」

宗正さんに促されて歩き出す。
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