おじさんは予防線にはなりません
自分の席でパソコンを立ち上げ、仕事の準備をはじめようとした、が。

「詩乃」

すぐ私のあとから出社してきた大河が、迫ってくる。

「ちょっと来て」

「えっ、あっ」

いいともなんとも言っていないのに、大河は私の腕を掴んで歩きだした。

「ねえ、昨日の夜、どこにいたの?」

連れてこられたバックヤードで、大河は私を逃がさないかのように壁ドンの姿勢を取った。

「ど、どこって……。
自分の、アパート」

真っ直ぐに私を見つめる、大河の瞳が怖い。
ついつい、視線を逸らしていた。

「……嘘つき」

耳元で囁かれ、背筋が粟立つ。
< 236 / 310 >

この作品をシェア

pagetop