おじさんは予防線にはなりません
「……わかんない」

私だってわかっている。
大河を選んでいれば、こんなにつらい思いはしないですんだって。

でも、無理だった。

「オレはもう知らない。
詩乃はひとりで、破滅の道を歩むといいよ」

「そう、だね」

椅子を立って大河が去っていく。
引き留めるならいましかない。
これが、大河が私に与えてくれた、最後のチャンスだから。

でも私は、指先すら動かせずに、その背中を見送った。

莫迦な女だと思う、自分でも。
一ミリの可能性もない男を想って、自分を幸せにしてくれる男を振るなんて。

無意識に、耳のピアスを触っていた。
自分に嘘はつかないと、決めた証。

このピアスに誓って、大河に縋るなんてできない。
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