おじさんは予防線にはなりません
顔を上げたら真っ直ぐな視線とぶつかった。

「なに、を……」

「まだこのまま、羽坂と繋がっていたい」

「意味が……意味が、わかりません」

手を振り払えばいい、わかっているのにできない。
自分の意思とは関係なく、のどがごくりと唾を飲み込んだ。

「俺は……羽坂を、手放したくない」

肉はとうとう、食べられないほどに真っ黒に焦げてしまった。
池松さんの手が、逃げられないように指を絡めてくる。
じっと見つめるその視線は私を絡め取り、コンマ一ミリも逸らせなかった。

「わがままを言っているのはわかってる。
でも俺はまだ、完全に羽坂との関係を終わらせたくない。
終わらせたく、ないんだ」

池松さんがなにを言っているのか理解できない。
手放したくないだとか、終わらせたくないだとか。
だって、池松さんは世理さんを愛しているから、私の想いには応えられない、って。
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