おじさんは予防線にはなりません
「わけがわからないよな。
俺だって、わからん」

ふっ、泣き出しそうに眼鏡の奥の目を歪め、池松さんは私の手を離した。
そのまま、ジョッキに残っていたビールをごくごくと一気に飲み干す。

「ただ、……このままもう、羽坂と会えないのは嫌だと思ったんだ」

ぼそっと呟いて焼き網の上へ箸を延ばす。
けれどすべて炭に変わっていると気づいて、苦々しそうに眉をひそめた。

「でも羽坂は、もう俺になんか会いたくないよな。
なら、仕方ない」

ぽいぽいと炭になってしまった肉を皿の上に上げ、新しい肉を焼き網の上に池松さんはのせた。

「……それ、は」

「うん?」

「私に少しでも、可能性があると思っていいんですか……?」
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