この溺愛にはワケがある!?

気付いてしまった!

その日の夜遅く、行政は本宅に帰っていった。
長い時間話し合ったが、良い案は何も出ない。
結局何の解決もしないまま、明日の結納を迎えることになりそうだった。

「もう昔のことなのになぁ……爺さんだって初恋の人を忘れられないだけで、婆さんのことを蔑ろにしてるんじゃないのに……」

台所に移動し簡単に夕食を済ませた二人は、食後のコーヒーを溜め息混じりに流し込んでいた。
因みに慌てて帰って来た為、鯛は忘れたそうで、夕食はあり合わせの物でオムライスを作った。

「それは男の人だからそう思うんじゃない?」

「そうか?」

隆政は首をかしげた。

「うん。いつまでも他の女の人のこと思っているなんて知ったら、私だったら離婚だわ」

「離婚!?厳しいな……」

物騒な言葉に、隆政は思わず身を乗り出す。

「隆政さんの初恋は?ふふ、梨沙さん??」

特に興味はなかったが『初恋』という話題が出たのでついでに聞いてみた。
その程度のことだったのに隆政は敏感に反応した。
『離婚』というワードがそれほどインパクトがあったのか。
彼は顔をしかめて言葉を選んでいる。
下手なことを言って美織にまでヘソを曲げられたら堪らないからだ。

「梨沙じゃない、絶対に。うん、ちがう……初恋というのは……覚えがないな」

「ないの!?はぁ?嘘ついてるんじゃないの??」

そんなバカな、と今度は美織が身を乗り出す。

「嘘じゃない……強いて言うなら……みおじゃないかなぁと……」

何やら恥ずかしそうに俯く男は、これが正解だ!というように満足な笑みを浮かべている。

「…………へぇ……まぁいいけど。そんなことよりもお婆様のことよね?」

「そんなこと!?自分が聞いておいて?」

隆政は唖然とした。
自分が危なげなく渡ったと思った橋を、後ろから破壊されたような気分になり大きく溜め息をつく。

「行政さんとおばあちゃん、おばあちゃんと小夏さん、小夏さんと行政さん……この三角関係に秘密がありそう……」

もう美織の頭はそっちでいっぱいのようだ。

「当時のことを行政さんに聞きたいけど、話してくれるかなぁ?」

「俺も聞いてみたが詳しくは話さなかったよ。ただ、七重さんと付き合ってたけど突然振られて、その後すぐ婆さんとの結婚がトントン拍子に進んだそうだ。多分その辺の事情が関係してると思う」

「そうね、そこが重要なとこよ」

「だな」
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