かわいい戦争
この手紙では、お父さんだけでなくお母さんも秘密を知ってると書かれてる。
文章から、悪いのは須夜崎さんの母親だけという感じがする。
お父さんは不倫をしていたんじゃないの?
『許せない』とか『償い』とかどういう意味なの?
『どうせあなたは知らないんでしょうけど、あたしの母親はあなたの父親に何通も謝罪の手紙を送っていたのよ。そして返ってきたのはその1通だけ』
こちらに伸びてきた手が、手紙と鑑定書と封筒をさらっていく。
『……残酷よね』
紙をしまった封筒を、カバンに入れ直す。
ゴミ箱に捨てるみたいに淡々と。
『苦しいのに謝らせてもらえない。謝っても許されない。嘘をついてる時点で、そこに本当の幸せなんて築けない。誰も幸せになんかなれない。……なのに、家族だから愛され、幸せになれると信じてる。バカみたいだわ』
そう……だろうか。
この世には優しい嘘だってある。
嘘のおかげで幸せになれてる人だっているはずだ。
現にわたしは秘密を知ってしまっても、今までの幸せが仮初めだったなんて思えない。思いたくない。
わたしは幸せ者だよ。
『よかったわね。一時でも幸せを感じられて』
『……須夜崎さんは?幸せじゃないんですか?』
『まさか。あたしが幸せなわけないじゃない』
鼻で笑われた。
意外だった。
あんなにいつも楽しそうにしていたのに。