かわいい戦争
『あたしは産まれてはいけなかったんだから』
『そ、それって、どういう……』
夕日が彼女を照らす。
茜色の光に喰われてしまいそうで怖い。
『あたしは、あいつが……母親があなたの父親を犯してできた子なのよ』
耳を、疑った。
ドクン、と心臓が軋む。
オカシテ、デキタ、コ。
なあにそれ。
そう知らん顔でおどけられるほど小さな子どもじゃないことが、今はこんなにも歯がゆくてたまらない。
『あたしの母親は近くの繁華街にあるキャバクラで働いていて、それなりに人気もあるらしいの。そこにあなたの父親が仕事の付き合いで立ち寄って、あたしの母親がもてなした』
サラリーマンのお父さんは毎日夜遅くまで仕事をしてる。
ときおり上司に付き合って飲んできたり、取引先と食事したりすることもある。
キャバクラに行ったことは初耳だけれど、ない話ではない。
『そのときあいつは、あなたの父親を好きになってしまったのよ』
とうとう『あたしの母親』と言い直さなくなった。
『あいつは愚かにもあなたの父親にアルコール度数の高いお酒を何杯も飲ませ、酔い潰れたところを見計らって、介抱するフリしてVIP専用の個室に連れ込んだの。そこで無理やり……』
須夜崎さんはわたしを一瞥すると、静かに口を閉ざした。