かわいい戦争



『家族も友達も居場所も幸せも、全部持ってるくせに。秘密を知らずにのうのうと生きてきたくせに!』



そっか。学校でたまに目が合ってたのは、勘違いじゃなかったんだ。


わたしが彼女を羨んでいたように、彼女もわたしを羨んでいた。



幸せそうでいいな、って。



『……全部持ってるなら、ひとつくらい譲ってよ』



だんだんと勢いがしぼんでいく。


ついには力が抜けて、座り込んだ。



『……ねぇ、やめてよ。幸せそうに笑わないでよ……。目障りなのよ』



華奢な肩が震えてる。

尖らせていた眼が潤んでる。


今にも泣き出してしまいそう。



『あたしは幸せじゃないのに、独りなのに……あなたばっかり……っ』



気張っていた強がりがボロボロ砕けて、弱々しい本性があらわになった。




――あぁ、かわいい。




まるで愛不足の拗ねた子どものようで。

まるで愛されたがりなお姫さまのようで。


とても、かわいい。



すぐに姉妹だとは思えないけれど、赤の他人とももう思えない。


そばに、いたい。

そばにいなきゃ。


見放すことなんて、できない。



守りたいとさえ思うこの気持ちは、もしかしたら優しさではなく同情なのかもしれない。


それでも、家族に寄せる想いと似ている気がした。


< 244 / 356 >

この作品をシェア

pagetop